いくつもの週末と本
大好きな作家や本、おすすめの小説の感想などを気ままに書きたい時に書きたいだけ
| ホーム |
『スイートリトルライズ』~まったく、結婚ってのは甘くない~
江國香織の描く夫婦生活は、いつもどこか息苦しく感じる。
さきほどまで泣いていた赤ちゃんがようやく寝つき、起こさないよう物音を立てずそっと動く時のような、ひっそりと息をする状態に近い。
思いっきり吸いこみたいのに、それをすると大切な何かに影響がでそうで怖くてできない。現状維持のためのちょっとした我慢。
じゃあなぜそんな相手と結婚したのだろう。そんな相手なのに、なぜ他の人ではだめなのだろう。
テディベアの作家である瑠璃子と商社に勤める聡。
「ケンカもしたことがない」一見仲の良い夫婦だが、その実「ケンカもできない」微妙な距離感のある二人。
瑠璃子は聡に「この家には恋がたりない」と言う。
会話をしていてもどこかちぐはぐで、互いの言いたいことが伝わっていないもどかしさを、どちらも自分だけが感じていると思っている。
配偶者を愛していないわけではない。
だが、次第に聡は後輩のしほと、瑠璃子は客の春夫と浮気に向かっていってしまう。
読んでいて、瑠璃子にも聡にもはがゆく感じてしまった。
なぜ不足を他で補おうとしてしまうのか。まるで砂漠に雪がないことくらいわかっているのに求める人のように。
いや違うな。雪がないことを知っているからこそ、安心して砂漠に探しに行けるのだ。
本当に雪を求めて行く場所には怖くて行けないのに、雪のようにふりつもる砂に「雪みたい」と満足するふりをする。
彼らは共依存という意味ではとてもお似合いのカップルだ。
二人は同時に浮気という状態になってしまっているので、それぞれ配偶者に対して「嘘」をつく。
もちろん本当のことを言ってしまってはあっという間に関係が破綻してしまうので、それは仕方がないのかもしれない。
だが、私はこの互いにつく嘘がなにより嫌いだ。
相手を騙している罪悪感で胸がいっぱいになりながらつく嘘も(主にこれは女性に多い)
相手を傷つけたくないからとやさしい自分によいながらつく嘘も(主にこちらは男性に)
どちらも身勝手で卑怯な手段だ。
相手を思いやれてない行動の裏返しに、相手を思いやっているふりで帳消しにしているのだろう。
それはもちろん何よりも自分のための嘘でしかなく、そうやっているうちに互いに大事な部分をすり減らしているように思えてしまう。
それではダメだよと言いたくなる。そんなんじゃ、いつまでたっても幸せにはなれないよと。
だって、その状態にある男女はみな口を開けば「苦しい」と言うのだもの。嘘をついている自分が辛いのに、嘘をつかれている相手が幸せなわけがない。
瑠璃子と聡は、いく千いく万もいる夫婦のうちの一組だ。
とてもありふれていて、愚かで悲しい。
かれらがちゃんと手をとりあって雪を探しに行けるといいなと思う。
きちんと相手に届く言葉で会話し、二人で砂漠を抜けだせればなと。
そうしたらもうちょっとだけ、夫婦というものがいいものに思えてくるのではないだろうか。
さきほどまで泣いていた赤ちゃんがようやく寝つき、起こさないよう物音を立てずそっと動く時のような、ひっそりと息をする状態に近い。
思いっきり吸いこみたいのに、それをすると大切な何かに影響がでそうで怖くてできない。現状維持のためのちょっとした我慢。
じゃあなぜそんな相手と結婚したのだろう。そんな相手なのに、なぜ他の人ではだめなのだろう。
テディベアの作家である瑠璃子と商社に勤める聡。
「ケンカもしたことがない」一見仲の良い夫婦だが、その実「ケンカもできない」微妙な距離感のある二人。
瑠璃子は聡に「この家には恋がたりない」と言う。
会話をしていてもどこかちぐはぐで、互いの言いたいことが伝わっていないもどかしさを、どちらも自分だけが感じていると思っている。
配偶者を愛していないわけではない。
だが、次第に聡は後輩のしほと、瑠璃子は客の春夫と浮気に向かっていってしまう。
読んでいて、瑠璃子にも聡にもはがゆく感じてしまった。
なぜ不足を他で補おうとしてしまうのか。まるで砂漠に雪がないことくらいわかっているのに求める人のように。
いや違うな。雪がないことを知っているからこそ、安心して砂漠に探しに行けるのだ。
本当に雪を求めて行く場所には怖くて行けないのに、雪のようにふりつもる砂に「雪みたい」と満足するふりをする。
彼らは共依存という意味ではとてもお似合いのカップルだ。
二人は同時に浮気という状態になってしまっているので、それぞれ配偶者に対して「嘘」をつく。
もちろん本当のことを言ってしまってはあっという間に関係が破綻してしまうので、それは仕方がないのかもしれない。
だが、私はこの互いにつく嘘がなにより嫌いだ。
相手を騙している罪悪感で胸がいっぱいになりながらつく嘘も(主にこれは女性に多い)
相手を傷つけたくないからとやさしい自分によいながらつく嘘も(主にこちらは男性に)
どちらも身勝手で卑怯な手段だ。
相手を思いやれてない行動の裏返しに、相手を思いやっているふりで帳消しにしているのだろう。
それはもちろん何よりも自分のための嘘でしかなく、そうやっているうちに互いに大事な部分をすり減らしているように思えてしまう。
それではダメだよと言いたくなる。そんなんじゃ、いつまでたっても幸せにはなれないよと。
だって、その状態にある男女はみな口を開けば「苦しい」と言うのだもの。嘘をついている自分が辛いのに、嘘をつかれている相手が幸せなわけがない。
瑠璃子と聡は、いく千いく万もいる夫婦のうちの一組だ。
とてもありふれていて、愚かで悲しい。
かれらがちゃんと手をとりあって雪を探しに行けるといいなと思う。
きちんと相手に届く言葉で会話し、二人で砂漠を抜けだせればなと。
そうしたらもうちょっとだけ、夫婦というものがいいものに思えてくるのではないだろうか。
![]() | スイートリトルライズ (幻冬舎文庫) (2006/08) 江國 香織 商品詳細を見る |
スポンサーサイト
<<『告白』~復讐はどこまでいってもやるせなく悲しい~ | ホーム | 『いつもの朝に』~こぼれてしまったミルクの行方~>>
コメント
コメントの投稿
トラックバック
『スイート・リトル・ライズ』
江國香織 『スイート・リトル・ライズ』(幻冬舎文庫)、読了。
江國センセお得意の、違和感がある結婚生活なのに
その違和感を違和感として認めたがらない夫婦のお話。
(って、...
| ホーム |