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『仔羊たちの聖夜(イヴ)』~彼らはいかにしてはじまったのか~


タック&タカチシリーズ第四作にして、主要キャラ四人のうちの三人の出会いが描かれる作品。
師走も押し迫った12月ボアン先輩が取り出したのはどう見てもクリスマスプレゼント。
だがこれは今年のではなく去年の物であると言う。去年、クリスマスに集まった6人でプレゼント交換をしたが、あの時全員がプレゼントを持ち帰り余るのはおかしい。そういえばプレゼントを買ったコンビニを出た際、ちょうどマンションから女性が飛び降りる現場に居合わせたが、その亡くなった女性の物ではないのだろうか?
最初は遺族に品物を返すだけの予定だったタックとタカチが、なぜ彼女は飛び降りるに至ったのかを探るうちに、そのマンションでは5年前にも飛び降りがあったことが判明して・・・。
私にとってこの本のメインはなんといっても「タックやタカチ、ボアン先輩がいかにして出会い、現在のような関係となったのか」である。謎解きももちろんあるのだが、やはりメインは出会いの場面でしょう。
そして著者のこのシリーズは、親と子の確執が描かれているのがやたらと多い。本編にも登場するような支配する親というのは数多く存在する。怖いのは、彼らが一様に「子どものため」と思い込むことで、自分のエゴをひた隠しにしていることだ。
また、ミステリとして主である「なぜ彼女(彼)はマンションから飛び降りたのか」という謎以外にも細かな伏線とそれをきちんと回収するしかけがあって、私はそちらの謎の方がずっと楽しめた。
ただ、それによって犠牲となる人物が痛々しすぎてなんとも言えない気分になる。
「いい人」が幸せになれず「身勝手な人」がおいしいめをみるのは現実だけで充分だとも思うのだ。
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