いくつもの週末と本
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『魔王』~おとーさん お父さん♪ はトラウマ~
じわじわと怖い。
随分昔に読んだ「デットゾーン」を思い出した。
日常から逸脱した超能力を手に入れた主人公が、必ずしも幸せになるとは限らない。
そんな切ない共通項で、主人公はじわじわと迫り来る恐怖と一人で戦わねばならない。
「魔王」と「呼吸」の中編二作が収録されており、前半は前述した能力により追い詰められる兄、後半はどこかのらりくらりとしている状況の弟という対比が面白い。
ただこれは後の『モダンタイムス』に続いていると知らなければ、結局世界はどうなったのか?と半端な気持ちのまま消化不良に陥ると思うのだがどうだろう。
会社員の安藤は弟の潤也と二人暮らし。
ある時、自分が念じたことを他人に喋らせることができる能力、名付けて「腹話術」を使えることに気がつく。
おりしも新進の政治家犬養が、その話術で巧みに人を惹きつけ、周囲はしだいにひとつの方向へ流されていく。
まるで過去の有名な虐殺者の存在をなぞるかのように・・・。
ファシズムへの懸念がまさに「魔王」の戯曲のように描かれていて、その取り込まれるような恐怖をとても強く感じる。
果たして自分はちゃんと自分の考えを話せているのか、誰かの言うがままではないのか、家族は?友人は?
主人公は幼い頃見た外国ドラマ「冒険野郎マクガイバー」の影響で、常に自分に「考えろ」と呟きながら考察するくせがあるが、まさにファシズムへの抵抗は自らが考えることにほかならない。
ただ、彼の戦いは孤独であり、その抵抗も最後まで孤独だ。
だからこそ「魔王」がエンドを迎えた瞬間は愕然とした。その後の「呼吸」を読むのをしばしためらったくらいに。
どうかこの作品を読む人はこれで終わりにせずに『モダンタイムス』も読み切って欲しい。
ずっと息を止めて走ってきたのが、それでようやく一息つけると思うのだ。
随分昔に読んだ「デットゾーン」を思い出した。
日常から逸脱した超能力を手に入れた主人公が、必ずしも幸せになるとは限らない。
そんな切ない共通項で、主人公はじわじわと迫り来る恐怖と一人で戦わねばならない。
「魔王」と「呼吸」の中編二作が収録されており、前半は前述した能力により追い詰められる兄、後半はどこかのらりくらりとしている状況の弟という対比が面白い。
ただこれは後の『モダンタイムス』に続いていると知らなければ、結局世界はどうなったのか?と半端な気持ちのまま消化不良に陥ると思うのだがどうだろう。
会社員の安藤は弟の潤也と二人暮らし。
ある時、自分が念じたことを他人に喋らせることができる能力、名付けて「腹話術」を使えることに気がつく。
おりしも新進の政治家犬養が、その話術で巧みに人を惹きつけ、周囲はしだいにひとつの方向へ流されていく。
まるで過去の有名な虐殺者の存在をなぞるかのように・・・。
ファシズムへの懸念がまさに「魔王」の戯曲のように描かれていて、その取り込まれるような恐怖をとても強く感じる。
果たして自分はちゃんと自分の考えを話せているのか、誰かの言うがままではないのか、家族は?友人は?
主人公は幼い頃見た外国ドラマ「冒険野郎マクガイバー」の影響で、常に自分に「考えろ」と呟きながら考察するくせがあるが、まさにファシズムへの抵抗は自らが考えることにほかならない。
ただ、彼の戦いは孤独であり、その抵抗も最後まで孤独だ。
だからこそ「魔王」がエンドを迎えた瞬間は愕然とした。その後の「呼吸」を読むのをしばしためらったくらいに。
どうかこの作品を読む人はこれで終わりにせずに『モダンタイムス』も読み切って欲しい。
ずっと息を止めて走ってきたのが、それでようやく一息つけると思うのだ。
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