いくつもの週末と本
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orange〜抱えた後悔と生きるということ〜
主人公の菜穂は高校2年生、始業式の朝ある手紙が家に届く。差出人はなぜか自分の名前で、その日の出来事をピタリとあてていた。そう、それは10年後の自分から託された「未来を変えてほしい」と切なる願いのこもった手紙だったのだ。
翔という少年が亡くなってしまう未来を変えるため、菜穂は友人達と協力する中で翔への恋も芽生え…。
読んでいておもしろいなと思ったのは、メインとなる現在(10年前の過去)のシーンはずっとファンタジーなのに、未来の彼らはあくまでも現実であるということ。過去が変わったのか手紙が届いたか、そこから派生した未来がどうなったかは、未来に生きる彼らには一切わからない。
それはそうで、現実に過去は変えられないしどうあがいたところで干渉する術はない。だがもしもこうだったとしたら…とありえた未来を想像することはでき、過去への後悔と共に想像しながら現在を生きることはできる。私達は普段からそうして後悔を未来へ繋げ、日々を生きているのではないか。とりかえしのつかない後悔とそこからどう未来に生きるか、そんな祈りの物語なのだと感じた。
また、過去の後悔があって未来を生きる主人公達が、再び過去の自分達へ思いを託す。このため未来が過去となり現在がそこからの未来となる。挿入される未来が実は過去の回想シーンであるという構図もおもしろいなと感じた。
未来からの手紙を受け取った主人公菜穂は、翔を助けるためできるだけ手紙の通り行動しようとする。だが恥ずかしさや気まずさなどの感情が邪魔をし「そんなに言われても簡単じゃない」と反発する。このあたりが未来を知り無駄なく最善の策をとる従来のSFとは異なり、もどかしくもリアルに感じられた。
実際に経験して後悔している未来の菜穂からすると「絶対勇気を出してこうした方がいい」と感じていても、言われた側は簡単にはできない。これはまるで親子関係のようだ。未来の主人公が結婚して子供を持つまさに母親の視点なのも興味深い。
私が一番好きなのは未来で母親となった菜穂が、幼い自分の息子=翔を眺めながら願うシーンだ。「もし、もう一度翔に会う事ができるなら、今度は小さな翔がいい。」「楽しい事や幸せな事をたくさん経験してほしい。そして世界一幸せな子になってほしい」ありきたりな親の願いなのに、全編を通してからこのシーンにくると、その笑顔にどれだけの葛藤や後悔や様々な想いが詰まっているのかがよくわかる。彼女の願いは祈りであり、それが形を変え現在の主人公に引き継がれていると感じた。
翔という少年が亡くなってしまう未来を変えるため、菜穂は友人達と協力する中で翔への恋も芽生え…。
読んでいておもしろいなと思ったのは、メインとなる現在(10年前の過去)のシーンはずっとファンタジーなのに、未来の彼らはあくまでも現実であるということ。過去が変わったのか手紙が届いたか、そこから派生した未来がどうなったかは、未来に生きる彼らには一切わからない。
それはそうで、現実に過去は変えられないしどうあがいたところで干渉する術はない。だがもしもこうだったとしたら…とありえた未来を想像することはでき、過去への後悔と共に想像しながら現在を生きることはできる。私達は普段からそうして後悔を未来へ繋げ、日々を生きているのではないか。とりかえしのつかない後悔とそこからどう未来に生きるか、そんな祈りの物語なのだと感じた。
また、過去の後悔があって未来を生きる主人公達が、再び過去の自分達へ思いを託す。このため未来が過去となり現在がそこからの未来となる。挿入される未来が実は過去の回想シーンであるという構図もおもしろいなと感じた。
未来からの手紙を受け取った主人公菜穂は、翔を助けるためできるだけ手紙の通り行動しようとする。だが恥ずかしさや気まずさなどの感情が邪魔をし「そんなに言われても簡単じゃない」と反発する。このあたりが未来を知り無駄なく最善の策をとる従来のSFとは異なり、もどかしくもリアルに感じられた。
実際に経験して後悔している未来の菜穂からすると「絶対勇気を出してこうした方がいい」と感じていても、言われた側は簡単にはできない。これはまるで親子関係のようだ。未来の主人公が結婚して子供を持つまさに母親の視点なのも興味深い。
私が一番好きなのは未来で母親となった菜穂が、幼い自分の息子=翔を眺めながら願うシーンだ。「もし、もう一度翔に会う事ができるなら、今度は小さな翔がいい。」「楽しい事や幸せな事をたくさん経験してほしい。そして世界一幸せな子になってほしい」ありきたりな親の願いなのに、全編を通してからこのシーンにくると、その笑顔にどれだけの葛藤や後悔や様々な想いが詰まっているのかがよくわかる。彼女の願いは祈りであり、それが形を変え現在の主人公に引き継がれていると感じた。
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