いくつもの週末と本
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『ワーキングガール・ウォーズ』~昨日の敵は今日の友~



タイトルの通り働く女性が主人公の物語。
37歳で独身、一流企業の係長である翔子は日々苦悩の連続。
若いOLは仕事ができず、叱るとすねるし、他の男性社員には女性の中間管理職ということで疎まれ恐れられるしいいことがない。
「なんで私ばかりがこんな目に!?」という思いの中、会社で気になる事件が起こり・・・。
最初はなんだか読み辛いなと思っていた。
主人公の翔子が、気持ちはわかるんだけどなんか一人で敵を作っているようなきつい鼻持ちならない人間で、感情移入がしにくいタイプだなと。
このまま話が続くと辛いなと考えながら読んでいたら第二章でびっくりした。
視点が今度は翔子ではなく、彼女が選んだ旅行先のケアンズでツアーコンダクターをつとめる愛美に変わるのだ。
その愛美自身も日本人観光客をバカにしたような一面を持っていて、翔子よりは若いけれど同じように嫌味な中年女性に見える。
当然ながら愛美の目から見た翔子は勘違いツアリストでしかなく、もうケチョンケチョン。
いやいや、あなたは翔子をそんなによく知りもしないでしょとついつい翔子を擁護したくなってしまったあたりで、作者の術中に見事はまっていた。
この主観と客観の切り替えはお見事!としか言いようがない。
そして第二章が終わる頃には翔子のイメージのみでなく、愛美に対しても穏やかな目で見ている自分に気がつくのだ。
ふたたび第三章では翔子の視点に戻り。
この時点で第一章の翔子と状況はほとんど変わっていないにも関わらず、最初に感じた嫌味やいけ好かない面が薄れてしまっていることに驚く。
逆に翔子のいい面がどんどん見えてきて、彼女をいいなと思い始めている自分がいる。
これが作者の計算ならほんとうにすごい。
会社でも学校でもそうだろうが、最初は嫌なヤツと思っていた人が徐々に印象が変わることがある。
もちろんその人自身の変化もあるだろうが、一番大きいのは実は自分自身のとらえ方の変化ではないだろうか。
特に新人の部下から上司を見た時、いい印象を持つことは少ないように思える。
きちんと怒らず指導できる上司が少ないこともあって「言ってることはもっともかもしれないけれど、言い方が気に入らない。」なんて反感を持ち、
上司からは「せっかく教えてやっているのに素直じゃない、生意気だ。」となる。
両者がちょっとだけ歩み寄れば、相手の立場に立てればそうではなくなるのに、と思えることは多い。
実際にあれほどケンカばかりしていた上司と部下が飲み会の席でなぜか意気投合し、それから職場でもなぜか良好な関係になることもある。
自分が第一章の翔子みたいに、第二章の愛美みたいになっていないかふり返るとともに、
第二章後半の彼女達のような関係になれれば、きちんとプライドと能力をかねそなえて仕事ができる人物になれればと思った。
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